週休3日制、副業・兼業のリアル:制度設計と社員活用の実際
週休3日制の導入を検討、あるいは既に運用されている人事ご担当者の皆様にとって、社員の「副業・兼業」への関心増大は、無視できないテーマの一つではないでしょうか。週休3日制により生まれた余剰時間を活用したいと考える社員が増えるにつれ、企業側には制度設計やリスク管理、そして新たな機会への対応が求められます。
本記事では、週休3日制下における副業・兼業をめぐる人事担当者のリアルな声に基づき、直面する課題と、それを乗り越えるための具体的な制度設計や社員活用の実際についてお話しします。
週休3日制導入で高まる副業・兼業ニーズ
週休3日制は、社員にワークライフバランスの向上や自己啓発の時間をもたらす一方、可処分時間が増えることで、副業や兼業へのハードルを下げる効果も期待できます。これは社員にとっては多様な経験を積む機会となりますが、企業、特に人事部門にとっては、新たな懸念事項や検討課題を生じさせます。
多くの人事担当者がまず懸念するのは、本業への影響です。副業による疲労蓄積や、情報漏洩、競業行為といったリスクをどう管理するのか。また、副業を許可する場合、勤怠管理や労働時間の把握はどう行うのか。これらの点は、制度設計において非常に重要になります。
人事担当者が直面する副業・兼業のリアルな課題
実際に週休3日制下で社員の副業・兼業にどう向き合うか、多くの企業で以下のような課題に直面しています。
- 本業への支障リスク: 副業の業務量が多すぎて疲弊し、本業のパフォーマンスが低下しないか。
- 情報漏洩・競業のリスク: 副業先で自社の機密情報が漏洩したり、競業となる事業に関与したりしないか。
- 勤怠管理・労働時間把握の複雑化: 副業の労働時間も含めた適切な管理が難しく、長時間労働のリスクや法的な問題が生じないか。
- 公平性の問題: 副業をしない社員との間で、評価や負担感に不公平が生じないか。
- 社員の体調管理: 副業と本業の掛け持ちによる健康面への影響をどう把握し、フォローするか。
これらの課題に対し、多くの人事部門では副業・兼業に関する明確なルール作りから着手しています。
リスクを管理するための制度設計と運用
副業・兼業を巡るリスクを適切に管理するためには、以下のような点に留意した制度設計と運用が不可欠です。
- 明確な規程の整備: 就業規則等に、副業・兼業に関する事項(届け出制/許可制、禁止行為、労働時間に関するルール、情報取扱に関する規定など)を明確に定めます。特に、競業避止義務や情報セキュリティについては具体的に記載することが重要です。
- 届け出制または許可制の導入: 社員が副業を行う場合は、事前に会社に届け出る、あるいは会社の許可を得る形式とすることで、会社が内容を把握し、リスクがないか確認できる機会を設けます。
- 労働時間の管理: 週休3日制の場合でも、労働時間の通算ルール(労働基準法第38条)は適用される可能性があります。副業を含めた労働時間を把握し、過重労働にならないよう注意が必要です。社員からの自己申告制にするか、何らかの形で確認する仕組みを検討します。
- 定期的なヒアリングや情報共有: 副業の内容や負荷について、社員との定期的な面談などを通じて把握し、必要に応じて業務量の調整やアドバイスを行います。
- 禁止事項の周知徹底: 会社の信用を損なう行為、情報漏洩につながる行為、過度な長時間労働につながる副業などを禁止事項として明確に定め、全社員に周知徹底します。
ある企業の人事担当者は、「最初はリスクばかりが気になって副業を完全に禁止しようかとも考えましたが、週休3日制でできた時間を有効活用したいという社員の意欲を削ぐのも違うと思い、規程整備とリスク説明会を徹底することにしました。特に情報セキュリティと競業については、具体的な事例を交えて説明することで、社員も真剣に受け止めてくれたようです」と話しています。
副業・兼業を「機会」として捉える視点
週休3日制下での副業・兼業は、リスクだけでなく、企業にとって新たな機会をもたらす可能性も秘めています。
- 社員のスキルアップ・成長: 副業を通じて社員が新たな知識やスキル(例:マーケティング、プログラミング、異業種での経験)を習得し、それが本業に活かされることがあります。
- 社外ネットワークの獲得: 社員が副業先で築いたネットワークが、ビジネスチャンスにつながる可能性もあります。
- 新しい知見・アイデアの獲得: 社員が社外で得た経験やアイデアを社内にフィードバックすることで、組織全体の活性化につながることも期待できます。
- 社員エンゲージメント向上: 会社が社員の「自分で働き方やキャリアをデザインしたい」という意欲を尊重し、サポートする姿勢を示すことで、社員の会社へのエンゲージメントが高まります。
- 採用ブランディング: 副業・兼業を積極的に認める企業文化は、多様な働き方を求める優秀な人材にとって魅力的な要素となり、採用活動において競争優位性となり得ます。
副業で得たスキルや知見をどう社内に還元してもらうか、といった点まで踏み込んで制度を設計している企業もあります。例えば、副業での学びを発表する機会を設けたり、社内勉強会で共有を促したりといった工夫が見られます。
まとめ:リスク管理と機会創出のバランス
週休3日制の導入と並行して社員の副業・兼業への関心が高まるのは、自然な流れと言えます。人事担当者としては、単にリスクを恐れて抑制するのではなく、発生しうるリスク(本業への支障、情報漏洩、競業、労働時間管理等)を適切に管理するための明確なルールと仕組みを整備することが最初のステップです。
その上で、社員が副業・兼業を通じて得られる成長や知見といったポジティブな側面にも目を向け、それが本業や組織全体の活性化につながるような働きかけを行うことが重要です。週休3日制がもたらす時間の余裕を、社員の自律的なキャリア形成やスキルアップ、そして結果として企業の多様性と競争力向上に繋げられるか。リスク管理と機会創出のバランスをいかに取るかが、週休3日制下の副業・兼業マネジメントの鍵となるでしょう。
このテーマは変化が早く、正解が一つではありません。他社の事例を参考にしつつ、自社の文化や実態に合わせた柔軟な対応が求められます。