働く会社の本音 週休3日編

週休3日制導入で変わる評価制度:公平性と生産性を両立する見直しポイント

Tags: 週休3日制, 評価制度, 人事戦略, 働き方改革, 生産性向上, 公平性

週休3日制と評価制度の見直し、人事担当者の新たな課題

近年、働き方改革の潮流の中で週休3日制への関心が高まっています。これは社員のワークライフバランス向上やエンゲージメント強化に繋がる可能性を秘めている一方で、人事担当者にとっては新たな、そして避けて通れない課題を提起します。その一つが、既存の評価制度をどのように見直すか、という問題です。

なぜ週休3日制で評価制度の見直しが必要になるのか

週休3日制が導入されると、多くのケースで週あたりの労働時間は短縮されるか、または従来の週5日勤務者とは異なる働き方が生まれます。従来の評価制度が「労働時間」や「オフィスでの滞在時間」を暗黙の前提としていたり、「一律の勤務体系」に基づいていた場合、そのまま適用すると様々な不公平感が生じたり、新しい働き方での貢献を適切に評価できなくなったりするリスクがあります。

特に、以下のような課題が人事担当者として強く認識される点です。

こうした課題に対し、多くの人事担当者は評価制度の根本的な見直しを迫られることになります。

公平性と生産性を両立させるための取り組み

私たちは、週休3日制の導入検討・実施にあたり、評価制度の見直しが喫緊の課題であることを認識し、様々なアプローチを試みました。ここでは、特に効果的であった、あるいは検討の俎上に載せた具体的な取り組みをいくつかご紹介します。

1. 成果・目標達成度評価の強化

最も直接的なアプローチは、評価基準をより明確な成果や目標達成度にシフトすることです。OKR(Objectives and Key Results)やMBO(Management by Objectives)といった目標管理手法をより精緻に運用し、個々の社員が限られた時間の中でどのような目標を設定し、どれだけ達成できたかを重視します。

重要なのは、目標設定プロセスです。週休3日制下での実現可能性を考慮しつつ、ストレッチの効いた、かつ具体的な目標を上司と部下が十分に擦り合わせて設定することが不可欠です。また、目標達成の「質」や「難易度」といった側面も評価に反映させるための基準作りも求められます。

2. 多様化する貢献の評価

労働時間や物理的な存在感だけではない、多様な貢献を評価に組み込む必要性を強く感じました。例えば、

これらを評価項目に具体的に落とし込むことで、単に与えられた業務をこなすだけでなく、新しい働き方の中で能動的に組織に貢献する姿勢を促すことができます。360度評価(多面評価)の活用も、こうした多様な貢献を多角的に捉える有効な手段の一つです。

3. プロセス評価と行動評価の見直し

成果だけでなく、そこに繋がるプロセスも評価対象とすることは引き続き重要です。ただし、週休3日制下では、これまでの「プロセス」の定義自体を見直す必要があるかもしれません。例えば、「定められた手順通りに仕事を進めたか」だけでなく、「限られた時間で最適な手順を考え、効率的に実行できたか」といった視点を加えるなどです。

また、当社の場合は、週休3日制で働く社員に求められる行動特性(例えば、自律性、高い計画性、効率的なコミュニケーション能力など)を明確にし、これを「行動評価」の項目に加える、あるいは比重を高めるといった変更を行いました。

制度導入・運用におけるリアルな困難と教訓

評価制度の見直しは、導入すればすぐに全てが解決するわけではありません。私たちが実際に直面した困難と、そこから得られた教訓を共有します。

まとめ:評価制度の見直しは、組織文化変革の機会

週休3日制導入に伴う評価制度の見直しは、単に評価の仕組みを変えるという行為に留まりません。これは、時間ではなく成果や貢献をより重視する組織文化への変革を促し、社員一人ひとりが自律的に、かつ高い生産性を持って働くことを支援するための重要なステップです。

公平性の確保には細心の注意を払いながらも、新しい働き方に適応し、社員のエンゲージメントと組織全体のパフォーマンス向上に繋がる評価制度を追求していくこと。これが、週休3日制を成功させる上で人事担当者に求められる重要な役割であると私たちは考えています。継続的な対話と改善を通じて、より良い制度を共に創り上げていく姿勢が何よりも大切です。