働く会社の本音 週休3日編

週休3日制を機能させる業務改革:属人化解消とチーム力向上の実際

Tags: 週休3日制, 業務改革, 属人化解消, チームビルディング, 人事戦略

週休3日制の導入は、単に休日を増やすだけでなく、働き方そのものを問い直す大きな機会となります。特に人事担当者として、制度設計や労務管理と並行して直面するのが、現場における業務効率化と生産性の維持・向上という課題です。その中でも、特定の担当者に業務が集中する「属人化」は、週休3日制を機能させる上で避けて通れない問題となります。

なぜ週休3日制で「属人化解消」が重要になるのか

週休3日制においては、社員一人あたりの稼働日が減るため、業務の遅延や担当者不在時の対応がよりシビアになります。これまで「あの人に聞けばわかる」「あの人しかできない」といった状態であった業務があると、週休3日目の不在時に業務が滞ったり、他の社員にしわ寄せがいったりするリスクが高まります。

これは、単に業務遂行上の問題に留まらず、社員間の不公平感を生んだり、特定の社員に過大なプレッシャーをかけたりすることにつながります。結果として、せっかく週休3日制を導入しても、社員の満足度が向上せず、制度が形骸化してしまう恐れもあるのです。

属人化を解消し、チーム力を高めるための具体的な取り組み

私たちの経験では、週休3日制の導入を機に、本格的な業務改革と属人化解消に取り組むことが不可欠でした。以下は、実際に効果があった、あるいは現在進行形で取り組んでいる主な内容です。

1. 業務プロセスの可視化と標準化

まず行ったのは、各チーム、各個人の主要な業務内容とプロセスを徹底的に洗い出すことでした。何にどれくらいの時間がかかっているのか、どのような手順で誰が行っているのかを明確にします。その上で、非効率な部分を見つけ出し、標準化できる業務はマニュアル化を進めました。

当初は「マニュアルを作る時間がない」「複雑すぎて書けない」といった現場からの声もあり、推進には苦労しました。しかし、一度作成してしまえば、担当者変更時や新入社員のオンボーディングが格段にスムーズになることを伝え、根気強く取り組みました。現在は、業務管理ツールと連携させ、マニュアルの更新性を高める工夫も行っています。

2. 情報共有ツールの活用と文化醸成

業務に関する情報や進捗が特定の担当者の中に閉じてしまわないよう、全社的な情報共有ツールの活用を徹底しました。プロジェクト管理ツール、チャットツール、社内Wikiなどを組み合わせ、業務の進捗状況、決定事項、必要な情報へのアクセスを容易にしました。

ツールを導入するだけでなく、「情報は積極的に公開する」「分からないことはまずツールで調べる」といった文化を醸成することが重要です。経営層やマネージャーが率先してツールを活用し、情報共有の重要性を繰り返し伝えることで、徐々に浸透していきました。

3. 知識・スキルの共有機会の設定

マニュアル化が難しい暗黙知や、担当者固有のスキルについては、定期的な勉強会やワークショップ、あるいはペアワークを通じて共有する機会を設けました。これにより、チーム全体のスキルレベルを底上げし、複数名で対応可能な業務範囲を広げることができます。

特に、異なる部署やチーム間での知識共有は、新たな視点や業務効率化のヒントにつながることもありました。一時的に業務時間を割くことになりますが、長期的な視点で見れば、組織全体のレジリエンス(回復力)を高める上で有効な投資だと考えています。

4. ジョブローテーションやクロスファンクショナルチームの試行

属人化の解消には、意図的に担当者を変更したり、複数のスキルを持つ人材を育成したりする取り組みも有効です。全従業員に適用するのは難しいですが、一部の部門や業務において、計画的なジョブローテーションを導入したり、短期的なプロジェクトのために異なる部署からメンバーを集めたクロスファンクショナルチームを組成したりすることで、互いの業務への理解を深め、属人化リスクを低減させています。

導入・運用上の困難とそこから得られた教訓

属人化解消の取り組みは、常に順風満帆ではありませんでした。

これらの困難を乗り越える過程で学んだのは、属人化解消は単なる業務効率化だけでなく、社員のキャリア開発やチームのエンゲージメント向上にもつながる、ということです。多様な業務に携わる機会が増えたり、チームで助け合う体制ができることで、社員のモチベーションが高まる効果も実感しています。

まとめ:週休3日制は業務改革の好機

週休3日制の導入は、属人化という長年の課題に組織全体で向き合い、抜本的な業務改革を推進するための絶好の機会となり得ます。属人化を解消し、チーム全体の力を高めることは、週休3日制を成功させるだけでなく、変化に強く持続可能な組織を作り上げるためにも不可欠な取り組みです。

容易な道のりではありませんが、現場のリアルな声に耳を傾け、粘り強く改善を重ねていくことが、より柔軟で生産性の高い働き方を実現する鍵となるでしょう。