働く会社の本音 週休3日編

週休3日制導入後の社員エンゲージメント:モチベーション維持と働きがいを高めるリアルな声

Tags: 週休3日制, エンゲージメント, モチベーション, 人事戦略, 働きがい, 組織文化

週休3日制への関心は高まる一方ですが、制度を導入した企業では、その「後」にどのような課題が発生し、どのように対応しているのか、リアルな声を聞く機会はまだ限られているかもしれません。特に、人事担当者の皆様にとっては、導入後の社員のエンゲージメントやモチベーションをいかに維持・向上させるかが、制度の成功を左右する重要なポイントとなります。

本記事では、週休3日制を実際に導入・運用している企業の人事担当者や現場責任者が直面している、社員のエンゲージメントやモチベーションに関する課題、そしてそれに対する具体的な取り組みや工夫について、そのリアルな声に基づいた知見をお伝えします。

週休3日制導入による社員の反応と、エンゲージメント・モチベーションへの影響

週休3日制の導入は、多くの社員にとってポジティブなサプライズとして受け止められがちです。ワークライフバランスの向上への期待から、導入直後はエンゲージメントやモチベーションが高まる傾向が見られます。しかし、時間の経過とともに、その効果が薄れたり、新たな課題が浮上したりすることも少なくありません。

現場の人事担当者の声からは、「最初のうちは皆喜んでいましたが、しばらくすると、休みが増えた分、他の日の業務密度が上がり、以前より疲労感が増したという声も聞かれるようになりました」「週の業務時間を維持するために、日々の業務がタイトになり、じっくり考える時間や、チーム内での雑談を通じた情報共有の機会が減ったと感じる社員もいるようです」といった意見が聞かれます。

このように、単に休日を増やすだけでは、社員の長期的なエンゲージメントや本質的な働きがいには繋がりにくい現実があることが分かります。むしろ、業務効率化が不十分なまま導入すると、かえって社員に負担をかけ、モチベーション低下を招くリスクも孕んでいます。

エンゲージメント・モチベーション維持向上のための具体的な取り組み

こうした課題に対し、多くの週休3日制導入企業の人事担当者は、様々な工夫を凝らしています。その一部をご紹介します。

1. コミュニケーションの質の向上

週休3日制では、チーム全員が揃う日が減るため、意識的にコミュニケーションの質を高める努力が必要です。「非同期コミュニケーション(※)ツールを活用し、情報共有のルールを明確にしました」「短い勤務時間内で密度の高いコミュニケーションを取るため、会議の目的と終了時間を必ず設定し、結論を明確にすることを徹底しています」といった声があります。また、オンラインツールだけでなく、「週に一度、部署やチームの垣根を越えたフランクなオンライン交流会を企画し、非公式なコミュニケーションの場を設けています」という取り組みも見られます。

(※)非同期コミュニケーション:メールやチャットなど、相手の都合の良いタイミングで確認・返信できるコミュニケーション手法。

2. 業務プロセスの見直しと裁量権の付与

業務効率化は週休3日制の前提となりますが、それを社員のエンゲージメント向上に繋げる視点も重要です。「単にタスクを詰め込むのではなく、社員自身に業務の進め方や時間配分にある程度の裁量を与えるようにしました」「定型業務は極力自動化・効率化し、より創造的で付加価値の高い業務に集中できる時間を確保するよう努めています」といった声は、社員が仕事への主体性や達成感を感じやすくすることを目指しています。

3. 公平な評価と貢献度の可視化

労働時間ではなく成果や貢献度で評価する仕組みは、週休3日制においてより重要になります。「短時間で高い成果を上げた社員を正当に評価するため、成果評価の基準をより明確にしました」「チームへの貢献や、他部署との連携における協力姿勢なども評価項目に加え、個人の頑張りが多角的に報われるように見直しています」といった声からは、社員が自身の働きがいを感じられるような評価制度の重要性が伺えます。

4. 変化への柔軟な対応と社員の声の収集

制度導入は終わりではなく始まりです。運用していく中で生じる歪みや社員の不満に、いかに迅速かつ丁寧に対応できるかが、信頼関係の構築とエンゲージメント維持に繋がります。「週に一度のチームミーティングで必ず『困っていること』や『改善提案』を聞く時間を設けています」「年に一度のフォーマルな社員意識調査に加え、匿名で意見を投稿できるツールを導入し、日々の小さな声も拾えるようにしています」といった取り組みは、社員が「自分たちの会社」という意識を持ち、制度改善に主体的に関わる機会を提供します。

成功と失敗から学ぶこと

ある企業の人事担当者は、「導入当初は、休みが増えることへの期待だけで、具体的な業務の見直しが不十分でした。結果、各個人の業務負荷が増え、かえって不満が高まってしまいました。慌てて現場の声を聞き、業務共有ツールの導入や、チーム内でのタスク分担ルールを見直すことで、徐々に改善に向かっています」と語ります。この経験は、週休3日制導入には、単なる制度変更に留まらない、業務プロセス、ツール、そして社員の意識改革といった多角的なアプローチが必要であることを示唆しています。

別の企業では、「管理職が率先して週休3日制の働き方を実践し、社員も休暇を取りやすい雰囲気を作ったことで、心理的安全性が高まり、業務時間外でもチーム内で助け合う文化が醸成されました。これが結果的にエンゲージメント向上に大きく寄与しています」という成功事例も聞かれました。経営層や管理職の姿勢が、社員のエンゲージメントに与える影響は非常に大きいと言えるでしょう。

まとめ:週休3日制とエンゲージメントは両輪

週休3日制は、適切に運用されれば、社員のワークライフバランスを向上させるだけでなく、エンゲージメントや働きがいを高め、組織全体の活性化に繋がる可能性を秘めています。しかし、そのためには、制度導入ありきではなく、社員の声に耳を傾け、業務やコミュニケーションのあり方、評価制度、そして組織文化そのものを継続的に見直していく努力が不可欠です。

特に人事担当者としては、週休3日制という制度を通じて、社員一人ひとりがより主体的に、より意欲的に働ける環境をいかに創り出すか、という視点を常に持ち続けることが求められます。今回ご紹介したリアルな声や取り組みが、皆様の会社の週休3日制導入・運用における一助となれば幸いです。